諏訪ブログ

ディープに諏訪を案内するガイドのブログ
2025年5月17日 林 聡一

【林】《レポート》「諏訪信仰と鹿」ツアー 最初の2回を催行!

こんにちは。スワペリ林です。

去る4月12日(土)、19日(土)に「『諏訪信仰と鹿』ツアー〜映画『鹿の国』の地を巡る」を実施しました。どちらも満員で、合計30名のゲストに参加いただきました。本当にありがとうございます。

予想外の(と敢えて言います)大ヒットとなっている諏訪信仰や文化をテーマにしたドキュメンタリー映画「鹿の国」。現在までに全国48館で上映され、一部の映画館では、すでに5ヶ月目に突入。こうした映画としては異例とも言える状況で、先日「ポレポレ東中野」に伺った際には、「ファンアート展」が行われているほど静かに熱く盛り上がっています。

*鹿の国の大ヒットについては、Wedgeが興味深い記事を載せています。

《「鹿の国」弘監督と石埜》

《「鹿の国」弘監督と三好》

スワペリガイドの石埜と三好が出演していることもあり、僕は諏訪地域での上映初日だった1月3日に岡谷スカラ座で初めて観たのですが、その日に「これはツアーをやらないと」と思い、舞台挨拶にいらっしゃったプロデューサーの北村さんにすぐにご相談、続いて監督の弘さんにお願いしました。お二人とも本当に快く応じていただき、それどころか背中を押していただいて、心から感謝しています。

それから3ヶ月。ツアー当日となりました。

諏訪大明神の思し召しか、二日間とも天気は快晴。ちょうど桜の開花のタイミングで素敵なゲストの皆さんをお迎えできました。30代から80代まで、長野県内の方の方が少なかったぐらいで、関東、東海、関西地方など遠方から皆さん諏訪に来てくださいました。地元の皆さんとスワペリガイドの協働も上手く行って、本当に良いツアーになったのではと思っております。

《神長館守矢史料館と満開の桜》

《泉野の穴倉と桜》

今回のツアーの特徴的な点を(完全なネタバレにならない程度に)幾つか紹介します。

【映画 X   現場】

ゲストのみなさんは全員「鹿の国」をご覧になってきています。映画の記憶を持ちながら諏訪大社をはじめ関連する地を巡ることで、より理解が深まった、腹落ちした、という感想をいただきました。

御頭祭(おんとうさい)の行われる場所、かつて御室神事(みむろしんじ)が行われていたと推測される場所、大祝(おおほうり)が生活していたであろう場所、など。最新の研究を元に、推測は推測であることを明言しながら、できるだけわかりやすく具体的に何がどこでどんな意味をもって行われていたのか、などをリアルなその場所で、説明しています。できる限り、いただいたご質問にもお答えしています。

スワペリでは、文化はその土地の地形、気候を始めとする風土と強く結びついていると考え、ゲストの方にもそんなご説明を現場の空気を感じていただきながらしています。

また、諏訪信仰研究ではわかっていないことも多く、神秘化されすぎたり、難しくなりすぎることも多いと思うのですが、僕らはできるだけわかりやすく、史実や事実に即した歴史と伝統を伝えたいと思っています。実はそれが一番面白いと思うからです。

《上社前宮〜かつて大祝のお住まいがありました》

《上社前宮 十間廊〜御頭祭のご説明》

★ゲストからのご感想:
「映画「鹿の国」の内容を深めるツアーになっていると思います。諏訪大社前宮、本宮の深掘りの後にロケ地を周ることで、「鹿の国」の持つ深い内容の理解に繋がったのではないかと思います。」(60代男性 長野県)
「(よかったのは)諏訪大社の前宮と本宮についてより詳しく知ることができた点。自分では見つけられない場所に連れて行ってもらえる点。諏訪地域の魅力が複合的に感じられる点。その場所に行かなければ感じられないことを体験できる点。(縄文人が気持ちいいと思う場所を体感できました。)その土地に根付いている文化を自然に学べる点。」(40代女性 長野県)
「極端に難しい事もなく誰にでも楽しめる内容で、それが良かったと思います。」(40代男性 三重県)

【ガイド二人の「ライブな」案内】

今回のガイドは、映画の出演者でもある石埜三千穂と三好妙心(祐司)の二人。どちらも民間の諏訪研究者として超一流で、二人の話が一緒に聞けるのは手前味噌ですが、贅沢な体験です。(私も初めてかもしれません。)阿吽の呼吸で、それぞれの日で、絡み方・役割が微妙に変わっており、どちらも面白いガイドになったと思っています。ガイドのやり方、内容については、リハーサルは行った上で、後は二人の「プレイ」に任せています。いつも以上に「即興」の要素があちらこちらに入り、ツアー体験に意外性と新鮮さを加えます。これは「ガイド二人でやる」ことで生まれた副産物かもしれません。

《「泉野の穴倉」を訪問》

《茅野市湯川にて》

★ゲストからのご感想:
「全然関係のない話題でも、石埜さんや妙心さんがなんでもご存知で、とっても勉強になり、楽しかったです。」(40代女性 東京都)
「(よかった点は)いしのさんに、また会えたこと。快晴だったこと。初めて山浦に行けたこと。着物姿のナマ三好さんに会えたこと。映画『鹿の国』をどう理解するかのヒントをいただけたこと。」(60代男性 神奈川県)

【素の諏訪、古層に触れる】

今回のツアーでは、午後はいわゆる観光地ではない、茅野の里山を歩きます。スワペリとしても、ここまで「普通の場所」を歩くのは、初の試み。ずっとやってみたいと、スワペリ内では話しており勝算はもちろんあったのですが、ゲストの皆さんがどう思われるか、内心ドキドキしていました。

訪問する茅野の里山(泉野、湯川地区)は、どちらも古い集落で、もちろん今も多くの方が現代の日常生活を送っていらっしゃいますが、少し目を凝らして歩くと幾重にも重なった古い生活文化の跡が見えてきます。

その地を歩きながら、石埜、三好それぞれが道々の風景の中に、都会ではまずみられないもの、地元に居ても生活の中では気づかないものを次々と見つけ、取り上げます。「リアルな民俗学、歴史学」と言ってもいいかもしれません。例えば道祖神や馬頭観音。例えば、用水路や洗い場などの水場。例えば、蔵の壁について。少々大袈裟かもしれませんが、歴史の教科書には出てこない、人間の生活の歴史が、今も普通に生活の場となっている場所から浮かび上がってきます。事前に二人と歩いた際に、いくらでも飽きずにあれやこれやと見つけては楽しく話していたので、心配はしていませんでしたが、ゲストの皆さんにもたいへん好評だったと思います。

《泉野の穴倉 保存会の皆さんと》

《茅野市泉野にて 里山を歩く》

《茅野市泉野にて》

《茅野市湯川にて》

そしてどちらの地区でも、地元のみなさんが温かく迎えてくださいます。少しお話を伺っただけでも、コミュニティの人と人との繋がりの深さや、現代の生活の中で過去からの生活文化を大切にしていることを感じます。

中心市街地からクルマでほんの20分ほどの所にこうした場所があることに、地元出身である僕自身が改めて驚きました。単なるノスタルジーではなく、ずっと暮らしながら昔からの習慣を守ってきた地域のみなさんと話していると、人の様々な生き方について考えさせられます。

★ゲストからのご感想:
「山浦地区の散策は、自分では絶対行けない場所だと思い興味深かったです。」(60代女性 長野県)
「(よかった点は)一般的なツアーではまず周れない場所へ行けた事。」(40代男性 山梨県)
「村歩きが楽しかった。」(80代男性 東京都)

*泉野の穴倉とこのツアーについて、長野日報さんが記事にしてくださいました。

【鹿料理】

映画では「地元の猟師」として登場していた青木さんは、地元で「カントリーレストラン匠亭」を営む料理人でもあります。ずっと思いはお持ちだったようですが、映画への出演が一つのきっかけになり、今回かつて諏訪大社の神事にて供されたであろう料理の再現に挑戦することに。映画で知り合ったガイドの三好が、諏訪市博物館と青木さんを繋ぎ、古文書の読解にも協力。古文書からの情報を元に、青木さんの創造力とご尽力で「信州 鹿之国御膳」が出来上がりました。

ツアーでは「鹿之国御膳 特別バージョン」です。鹿づくしの8品と地元の伝統的な付け合わせ。これだけの鹿料理を一度に食べられることは、なかなかないのではと思います。

《猟師であり料理人の青木さん 匠亭にて》

《「鹿之国御膳」特別バージョンの一部》

★ゲストからのご感想:「『鹿之国御膳』とても美味しくいただきました。鹿肉の美味しさに開眼してしまいました。料理の再現には、ご苦労なさったことと思います。」(60代男性 長野県)

*匠亭さんと「鹿之国御膳」については、いくつかの新聞にも取り上げられました。ガイドの三好についても書いていただいています。読売新聞   長野日報    信濃毎日新聞

以上、現在までのツアーのご報告です。
最後は宣伝になりますが、鹿の国を観て諏訪のことや、日本の古い信仰・文化について興味をもった方には楽しんでいただける内容と自負しています。7月まであと3回同じツアーを実施します(でも季節も異なりますし、それぞれが違う「ライブ」になります!)。まだ、6月、7月の回に若干の空きがございます。ご興味がある方は、こちらをご覧いただければ幸いです。


これからさらに面白いツアーを企画・実施していきますので、よろしくお願いします!

 

林 聡一

林 聡一

スワニミズム美術部、大昔調査会会員。広告・マーケティング会社を経て、SUWAエクスペリエンスを立ち上げる。事業を実施する「有限会社丸ト林商店」代表。全国通訳案内士、国内旅行業務取扱管理者。2022年「アートの歴史を変えた諏訪人」松澤宥生誕100年祭実行委員長。音楽、アート、日本酒、フェス、旅行をディープに楽しむのがライフワーク。

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